とりあえず自分が語れるところまでの個人制作アニメまとめ
http://d.hatena.ne.jp/ill_critique/20091018/1255876620を読んだ。カトゆーさんも指摘していたが、この人はちと視野狭窄すぎじゃないかなぁ。私も偉そうに語れるほど詳しいわけじゃないけれど、ここまで個人制作アニメ界隈をまったくしらない状態で喋るのはどうかと思う。
まずもって個人制作アニメを新海誠→宇木敦哉だけで語るのはどうなのよ。それはテレビアニメをエヴァ→ハルヒだけで語っているようなものだと思うよ。
そのあいだにも有名な人だけでも、吉浦康裕、御影たゆた、青木純*1、FROGMAN、真島理一郎が活躍しているし、個人制作アニメ出身者まで含めればみんなのうたの「月のワルツ」を制作したいしづかあつこ*2や、米アカデミー賞を受賞した加藤久仁生なんかもいる*3。有名じゃない作品まで含めれば、もっと作品はでている現状がある*4。
もっといえば、個人制作アニメを劇場版レベルでやるなんてリスクの高いことは普通はやらないよ。多くの人は作家性が生かせるアートアニメーションや音楽PVで活躍している。あとは広告かな。藤田純平みたいに広告の世界に行く人もいる。
文化庁メディア芸術祭では大手制作会社の作品に混じって入賞する個人制作アニメも毎年出ているし、CGアニメグランプリでも素晴らしい作品が毎年出ている。
宇木敦哉がこれだけ話題になって、劇場にまで上り詰めたのは、動画革命東京という後ろ盾があったことと四季賞出身者という経歴が大きい。もちろん作品のクォリティが高いことが前提としてあるけれども、宇木敦哉がそこまで突出しているとは思えないよ。
てかね、どちらかといえば新海誠以降に個人制作で作品をつくる作家がたくさん出すぎて、そしてその作品のクォリティが個人制作を前提にしなくても十分なことから、最近では個人制作を前面に出さないことが多いくらいだと思うよ。
まるでそうしたデジタル化による個人制作アニメの可能性に対して痛烈な「皮肉」を浴びせるかのように、作品を構成する動画13000枚、全て「手書き」によって制作してしまっていたわけです
ちゃんちゃらおかしい。別に個人制作アニメ=デジタルと決まっているわけじゃないし、手書きの個人制作アニメーションなんて珍しくもなんともないよ。凄すぎて商業ベースでのっけるのが難しいレベルの作品もみたことがあるくらい。
ホッチカズヒロさんの「アニマ」だけれども。肉体の躍動だけでこれだけのアニメがつくれることに、初めてみた当時は感動した記憶がある。
「皮肉」にも個人制作作家たち自身こそが、インディーや同人なぞ、既存の商業ルートの下位区分にしか過ぎないのだ、ということを暗に体現してしまっている
それがどうしたの。というか、新海誠と宇木敦哉しか語っていないレベルでよくいうわ。同人で地道に頑張っている作品もたくさんあるっての。
自分の作品価値を高める為に商業に出るなんてことは、TYPE-MOONの例を出すまでもなく普通にありえること。いちばん顕著でわかりやすいのが漫画で、同人から商業の世界に行く人なんてたくさんいるでしょ。
アニメの場合、同人=アートアニメになっているような現状もあるから、オタク視点からすればどうしても目立たない。個人制作アニメにおけるid:ill_critiqueさんが抱いている期待はそちらの世界で発揮されている。
個人制作アニメがアニメに果たした役割でいえば、加藤久仁生監督の米アカデミー賞受賞で十分でしょう。
あまりにも昔にエヴァをみて最近になってたまたまハルヒを観たことからしったような気になって偉そうに語っている人みたいだったから、思わず反応してしまった。
オタクやネットで話題になったのはこの二人だけという反応もあるかもしれないけれども、それは完全なオタクの傲慢だと思う。別にアニメは日本のテレビや劇場で放映されているものやネットで話題になっているものがすべてではない。
- 出版社/メーカー: 株式会社ドーガ
- 発売日: 2008/05/05
- メディア: DVD
- 購入: 1人 クリック: 73回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
追記:山村浩二を外したのは意図的かというブコメがあったけれど、意図的です。
理由は二つ。元記事との関連から新海誠→宇木敦哉のあいだに現れた新人に限定して書きたかったからと、山村氏などのアートアニメーションを俯瞰して語れるほどの知識が私にはないから。
そこまで深く語るならば、「頭山」とか、「冬の日」とか、「死者の書」まで触れる必要があるのですが、私には無理です。
もっといえば、過去にCGアニメコンテストやデジスタなどを興味深くみていた経験があるので、その辺を掘り下げてみました。
*1:http://www.youtube.com/user/aokijunmovie
*2:ちなみにもともと「月のワルツ」はいしづかあつこ個人への制作依頼だった http://japan.cnet.com/blog/macalie/2008/05/23/entry_27001718/
*3:ちなみにスタッフクレジットをみる限り、「つみきのいえ」のアニメーションは加藤久仁生監督個人での制作みたいなので、「つみきのいえ」も個人制作といえなくもないかもしれない。
*4:「カクレンボ」や「惑星大怪獣ネガドン」は比較的有名かもしれない。ロマのフ比嘉さんは「ほしのこえ」以前から活躍という印象なので外しました。