未熟という意味でなく、中学生版エヴァンゲリオン――「交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい」  監督:京田知己

 パチンコのCMがいい感じで、最近になって映画版を公開したので、気になってDVDを借りてみてみた。原作はテレビシリーズ放映時に名前を聞いていたくらいで、評判はよかったことはしっているけれど、内容はほぼ知らない状態。やっぱりテレビシリーズの総集編=映画化は難しいね。ラーゼフォンの偉大さを思い知ったよ。
 物語の内容は伝わる。だけれども、そこに必要な葛藤が伝わらず、深みが伝わってこない。通常のテレビシリーズの映画化よりも時間を掛けての映画化だからもっと上手くつくっていることを期待してみたんだけど、期待外れだった。過去の人気作の総集編をわざわざしなければならないくらいBONESの経営は苦しいのかな。
 個人的な視点で観れば、映画の総集編を上手くつくりたいのならば、ホランド関係の下りはいらないだろう。原作の人気キャラクターであることは予想がつくし、物語を伝えるためにも必要なんだろうけど、総集編で時間が少ないことを考えると、もっとエウレカレントン、世界の交わりをもっと丁寧に描いていきたかったところ。
 セカイ系的な内容も高校生が主人公だと鼻で笑うところだが、中学生が主人公ならば未熟な部分だけ愛せる。ホランドの世界への憎みかたも彼らが背負った運命を考えればわかる。だが、頭でわかっても、それを心に動機づけするにはそれなりに説得力のある演出や脚本が必要だ。テレビシリーズを焼きなおしただけのこの作品にはそれが決定的に足りない。
 十分におもしろそうなだけに残念。現在、実家帰郷中につき暇なので、テレビシリーズをまとめて借りてみようかと検討中。
 
追記:Wikiより

企画当初、新作カットを加えたテレビシリーズの総集編を劇場版として公開する案もあったが、テレビシリーズを再編集した劇場用アニメでありながら、テレビシリーズの総集編ではない劇場用アニメの制作に挑戦したいという京田知己の意向から、(中略)テレビシリーズとは別世界の物語として制作されている。

 なるほどね。それならば、結論だけはきっちり描かれているのにそこに至るまでの部分が極端に薄く感じるのも理解できる。申し訳ないけど、この監督は脚本家は向いていないね。監督の伝えたいことは伝わるけれど、まとまっていないから説得力が足りない。単純に原作の総集編にすればよかったとはいわないけど、脚本家は連れてきたほうがよかったんじゃないかとは思った。
 
更に追記:よくよく調べてみたら、この人って映画版ラーゼフォンの監督やってた人なのね。どうなんだろうなぁ。映画の作品としては間違いなくラーゼフォンのが上だと思うけども。ラーゼフォンのときは総監督と脚本やってた出渕裕さんがよほど上手かったのかねぇ。