塩で食べる料理も旨いけれども、豪華でなくてはつまらない――「東のエデン」  監督:神山健治

 「東のエデン」を見終わった。神山監督は壁を超えられないなぁ。神山監督は表面的なおもしろさを抽出するのは上手いけれど、神レベルの作品はつくれないのよね。
 有名な監督みたいに個性で勝負するタイプではなくて、普遍的なおもしろさをどれだけ凝縮して上手くつくれるかってタイプだから、この程度になるのは仕方ない。これ以上をつくりたければ、個性を凝縮するしかないのよね。人を集めて、そのなかでより良い意見を集約する制作方法じゃあ、ここまでが限界のような気がする。
 この作品も結局、どっちつかずだなぁ。予想通りなので、驚きもしないけれども。
 それでももう少し健闘するかと思ったが、謎は放りっぱなし。映画版で解明される…とは考えにくいよなぁ。いちおうドラマとしては完結に向かって、楽しめるものにはなったけれども、やはりそれ以上には至らず。
 最初の部分で、雰囲気をつくろうなんて変な浮気をせずに、単純にセレソン同士の争いをもっとやればおもしろくなったような気がする。ラストの部分までを8話くらいに収めて、+αを残りの3話で描いていれば…。
 どちらにしろ、謎が多く残りすぎ。映画版に期待を持たせるにしても、どれだけの人が原作のないアニメをみて、映画を観にいくのか。興行的には間違いなく失敗すると思われ。「空の境界」レベルの規模でやるのならば、まだ問題ないだろうけど。
 たまに観るにはおもしろいアニメだけれども、もっと個性のある刺激的なアニメのが楽しい。一般に周知させる普遍性を持っているのは認めるけども、アニメ自体、アニヲタ以外に誰が観るのって状況になっているなかで、勝負には不利かと。
 I.Gは必至に一般層に作品を周知させようとしているけど、古くは宮崎駿が、新しきは細田守がやっているように、まずは手っ取り早いヲタ層を掻き集められる作品をつくって、そこから一般層にも影響力を広げていくほうが確実だと思ったりする。