ヘタレな松山ケンイチはかわいい?――「人のセックスを笑うな」 監督:井口奈己

人のセックスを笑うな [DVD]

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 あらためて思うけど、「人のセックスを笑うな」って、これほど紹介しにくいタイトルもないよなぁ。こんなタイトルだけど、耽美ではなく、男が喜ぶシーンもほぼなく、どちらかといえば女性が楽しむ作品。
 某所で去年の映画一位に選ばれていたので視聴。そこは女性が集まるブログでの集計だったのだけれど、それも納得。これは見事に女性のためのための映画。
 それにしても、永作博美さんと松山ケンイチのキャラ造形が素晴らしい。一歩間違えれば、どちらも女性に嫌われる女性や、ただのヘタレになってしまうところを、井口奈己監督独特のセンスでまったく違ったものになっている。
 二人が本当にかわいらしく描かれている。松山ケンイチはへたれで、それ以上でもそれ以下でもないんだけれど、女性が愛でたくなるようなヘタレにしたてあげられている。頼りない、子猫みたいなそんな感じ。
 永作博美さんもただ単に松山ケンイチにうつつをぬかしているだけじゃなくて、きちんと自分をもって、恋愛している感じが好印象。小悪魔的ではあるけれど、根っこのかわいさだけは残す。こういう微妙な部分を描ききれる井口奈己監督は素晴らしい。
 にしても蒼井優は演技が上手いなぁ。惚れ惚れしてしまった。週刊真木よう子の最終話で永作博美が出演して真木よう子が惨敗して爆笑したけれど、蒼井優はそういうことじゃなくて、ちゃんと自分の演技を出せているもんなぁ。
 どう転んだところで、ほとんどの男性には描ききれないであろう作品。「犬猫」を撮った井口奈己さんだからこそ描ける世界観。細かい描写がはまる人にはたまらない。ちょっと大人の女性向けの作品。