昔のマンガは何故おもしろかったと感じてしまうのか試論

 なんかしんないけど、昔のマンガはおもすれーとかいう懐古厨が大人気らしいので、便乗してなんでそんなことになるのかを考えてみた。

1、本当に昔のマンガよりも今のマンガのほうがレベルが低い

 まぁ、よくいわれることだけども。普通に考えればありえない。なぜならば現代のマンガ家は過去のマンガ家に影響を受けて作品をつくるわけで、単純にレベルが低いとは考えにくい。トップはともかく、平均では絶対に高くなっている。イラストなんかをみてみると、比較はしやすいかと。
 手塚治虫とか、鳥山明とか、昔には凄いマンガ家がいっぱいいたと仰るかもしれないが、時代のトップと現代の多くのマンガ家を比べても比較にならないのは当然。浦沢直樹とか、井上雄彦と彼らを比べても圧倒的に現代のマンガ家が劣っているというならば、まだわかるけれどもそうじゃないでしょ。
 本当に昔のマンガと今のマンガを並べて、昔のほうが平均のレベルが高かったのかは疑問。まったくマンガを読んだことがない子どもを何人か集めて、昔のマンガと今のマンガを与えてみればどっちがおもしろいかは一目瞭然だと思うんだが、誰かやってみてくんない。

2、懐古厨

 別に悪い意味じゃあない。誰しも過去の想い出は美化されるもの。子どもの頃に読んだ少年ジャンプと30年後の今に読むジャンプじゃあ感慨が違って当たり前。比較対象もできるしな。まったく比較対象がないドラゴンボールと、ドラゴンボールと比較しながら読まれるONE PIECEではONE PIECEに勝ち目がないのは当たり前。
 加えて、現代の作品は現代の読者向けに描かれている。過去の作品を求めて読んでもおもしろいわけはない。おもしろい作品を読みたければ、自分を受け入れてくれる作品を探せ。それをせずに今のマンガがおもしろくないというのはただのわがまま。
 ないってんなら残念だが、近い作品を探すか、小説や映画など別のジャンルにそれを求めるか。エンタメってのは数限りなくあるから、どうとでもなる。mixiで昔のマンガのコミュ探して、花を咲かすのもエンタメの一つ。

3、「マンガ」の成長速度が遅くなっている

 これはあるかもしれないなぁ。マンガも子どもと同じで、最初の頃はまだ誰も描いていなかったから、いろんな新しい表現をどんどん発明することができた。映画や舞台など、他のジャンルのいいところをどんどん取り込むことができた。
 だけれども、マンガが生まれてからこれだけの年月が経ってしまうとどうしても新しい表現を生み出そうとしてもハードルが上がってしまう。ほとんどの表現は先駆者がやりつくしている。新しいことをやろうと思えば、既にあるものを組み合わせるか、マニアックなところを狙うしかない。新しい作品をつくることの難しさはどんどん高まっていく。
 過去のマンガの成長度合の凄さをしっている人からすれば、いまのマンガはいつも同じでつまらないと感じても仕方ないのかもしれない。

4、嗜好の細分化

 これはよくいわれること。これだけ雑誌が多く発売されて、雑誌ごとのカラーが極められていっている。とすれば。誰でも楽しめる作品よりもある特定の人だけ楽しめる作品が昔よりも増えていると考えるのは難しいことではない。もしそうならば全体に対するおもしろくない作品の比率はあがったのも仕方のない話ではないだろうか。
 まぁ、これに対する回答はあなたにあった作品もあるはずだから、根気よく探せってだけなんですけどね。

5、読者の求めるレベルが上がった

 これもありうるなぁ。過去にものすごい作品を描いたマンガ家がこれだけいて、彼らのマンガを熟読したマンガ読みたちが求めるマンガはそりゃもうレベルの高いものであるはず。マンガ読みたちは甘めに読んでいるつもりでも、作品からすれば辛口もいいところ。しかも昔の作品の思い入れがあるわけだから、恐い恐い。
 しかしこれについちゃあ、ちゃんと昔からマンガを読み続けていて、それでも今のマンガはおもしろいっていう人がいるので、マンガの読み方の部分が大きいんじゃないかと思います。どういうところに注目して、どうやって読めば、その作品のおもしろさがわかるのか。作品ごとに違うので難しいですが、それがマンガ読みの力量ではないかと。

6、表現の限界にきている

 成長度合と似た話ではあるのだけれども、これだけマンガが発売されていると、一口に新しい表現をしようとしても不可能。とすれば、どうしても既にあるものをつぎはぎしたものになってしまう。そうなれば、その表現を既に読んだ人からすればつまらないという感想につながる。
 これも既にたくさんの作品を読んでいることの弊害であって、読者自身が細かい読みかたをするなどの工夫をするしかない。それこそ初読者も、玄人読みも同じように楽しんで読める作品なんてそれは傑作の証左だし、そんな作品はどんな時代でも極々少数しかない。
 作品の多くが初読者に近い人々をターゲットにするのは当たり前だし、仕方ない。ここんところは玄人読みが大人になるしかねぇんじゃないかと思う。

7、現代のマンガをどう読めばいいのかわかっていない

 これは難しい問題。マンガはエンタメだから誰でも読めなきゃいけない。だから読みかたがわからないのは致命的。それだけ難解なマンガのほうにも問題があるといえるし、読解力が低い読者のセレクションが悪かったともいえる。
 これが過去にマンガをたくさん読んできたなんて人ならば、ただ単純にその人のマンガ読解力が低いだけなのだからたくさん読んでレベルを上げなさいとしかいえない。

8、規制が強くなりすぎた

 暴力規制、性規制。昔は割とゆるやかで何でもありだったんだけど、今は……なんてことはないわなぁ。性描写なんてエロマンガにいけば、数限りなくあるし、少女コミックの暴挙をみればどれだけエロが書かれているかがわかるというもの。しかし、ほどほどのエロがなくなってきたというのはいえるのかもしれない。
 けれども、それよか慣れのほうが大きいのではないかと個人的には思う。昔のボンボンのエロの凄さとおもしろさをしっていると、「To LOVEる」なんてつまんなくて読む気にならないもの。
 暴力規制についてはどうなんだろう。個人的にそちらをあまり読まないのでわからない部分があるのではっきりとはいえないけれど、男塾みたいな感じの作品は減っているような気がする。これについてはドラゴンボールの影響なんかもありそうですが(拳よりも気の塊で戦うみたいな方向性)。

9、ただ、昔のマンガ家は天才っていいたいだけ

 もう今のマンガは読まなくていいですから、どうぞ昔のマンガだけ読んでいてください。マンガにも読者を選ぶ権利はあります。おもしろく読もうと思っていない読者は帰ってください。
 
 おもいついた順なんでバラバラです。御免なさい。更におもいついたら追記しまふ。細かいところでみれば同じようなことをいっているところもありますが、気にしないでください。根拠があっていっているわけではないので、反論はいくらでもしてください。私がへぇ〜って思います。