新しいジャンルの進化の過程を考えてみる

 他ジャンルとの関連性から、大体新しいジャンルができたとして、それが一般に認知されていく過程はこうなんじゃないかとイノベーター理論 と共に考えてみる。
 ちなみにここでいうジャンルはラノベとか、BLとか、百合とか、そういうジャンル。

購入者属性 説明
イノベーター ジャンルに属する作品は出ており、単語も出現してはいるがジャンルとして未だ確立していない状態。
ジャンルの代表作が一作のみの場合も多い。
ジャンルを意識してはいないが、他ジャンルの有名作家が関連作品を書いていたりもする。
アーリーアダプター マニアの人たちにジャンルが認識されはじめ、作品がぽつぽつと出始める状態。
ものによっては次のブームは○○だ。なんてことも言われ始める。
アーリーマジョリティ アーリーアダプターが布教を行なったことで、読者が増えてきた段階。
ジャンルとしてのコミュニティが出来始める。
本来は他のジャンルの作品をそのジャンルであると位置づけることでメジャー化を働こうとする。
レイトマジョリティ 読者だけでなく、作品自体もある程度頻出するようになってきた段階。
読者もそれまでのマニア層から一般層の一部も取り込みはじめる。
ジャンルによっては専門雑誌ができたり、マス媒体でも取り上げはじめる。
ラガード マニア層のなかでは知っていて当然。一般層でも興味のある人は知っている状態。
そのジャンルの作家が一般誌でも活躍をはじめ、ある種の越境がはじまる。
一般層ではジャンルをしらなくても、関連作家は読んでいる人も多い。

 BLはよしながふみで、ライトノベル桜庭一樹有川浩でラガートまでいってますね。ラガートまで行けばある種の詰みになります。この先があるとすれば、そのジャンル自体が新しいスタンダードになることでしょうか。
 百合はアーリーマジョリティからレイトマジョリティへの移行が着々と進んでいる状態。百合は「百合姫」という専門誌がありますが、あれはジャンルの青田買いでアーリーアダプターくらいの段階で初期の百合姫を刊行しています。いまから考えると、どんだけ早いねんと突っ込みたくなりますが、BLがそれだけ指示を受けていたことから、勝算はあったんでしょう。
 ケータイ小説はレイトマジョリティですね。アーリーアダプターからここまでは早かったんですが*1、内容、文体が子どもっぽかったり、ケータイで読まないとおもしろさがイマイチ伝わりにくいことから、ラガートまでは時間が掛かりそうです。将来的には間違いなくラガートまでたどり着くでしょう。
 ギャルゲーはレイトマジョリティからラガートのあいだでしょうか。奈須きのこ田中ロミオは既に越境も完了していますが、ジャンルとしてはまだまだラガートまではいけていないかと。18禁とエロゲーの存在がどうしてもハードルに。葉鍵が一般層にきちんと認知されるくらいじゃないと難しいかな。
 同人市場なんかは既にラガートまでいってはいるんですが、意識的にレイトマジョリティにとどまろうとしている風にとれますね。それも外部からの力が強すぎて、どんどんラガートにされつつありますが、ラガートまでいくとそれは既に同人なのかって問題に直面してしまうので、問題も多そうです。
 あと、ラガートまでいくというのは一見して良さげなんだけれども、ジャンルとして既に詰んでいることから布教の必要がなくなり、拡大の為の議論がなくなってくるという弱点もある。ジャンルに対する批評もそれまでのどうやって読者を多くするか、ジャンルを根付かせるかから、どうやってジャンルとしての深みを追求するかに移行しなきゃいけない。だからといって、ジャンルとしての深みを追求しすぎると、小説みたいに一般層が読まなくなるから難しい。だから、個人的には批評なんてなくても(むしろ無いほうが)いいんじゃないかと思うときすらある。
 レイトマジョリティまでいって、一般への認知が高まってくれば、ジャンルとして死滅することもないですが、アーリーマジョリティまでだと死滅する可能性もある。こういうのはイノベーター理論の専門誌とかでは詳細に書いてそうですが、思いついたので書いてみた。

*1:Yoshiが活躍していた時期がイノベーターからアーリーアダプターと考えていいかと。