短編はTYPE-MOONのもうひとつの才能の凄さをまざまざと魅せつける――「428〜封鎖された渋谷で〜」ボーナスシナリオ2  製作:TYPE-MOON

 読みたい人が多そうなので、「428」のTYPE-MOONパートのみの感想を書いてみる。全体感想は明日にでも。
 
 TYPE-MOONファンは間違いなくプレイすべき傑作。他の作品をやらなかったとしても、これをやる価値がある。
 奈須きのこの凄さはいうまでもない。けれど、これからいくらTYPE-MOONが作品を出していくとしても、これほどまでに武内崇を堪能できる機会なんてほとんどないだろう。シナリオの凄さはどの作品でも楽しめるが、イラストの凄さをここまで楽しめる作品なんて短編であるこの作品くらい。
 シナリオはシンプルな血を血で洗う抗争を描いた物語で、まさしく自分が読みたかったものなので大満足。奈須さんは「無理に本編に合わせる必要はありません。むしろ428の中で奈須節を見せてください」*1といわれたらしいが、まさにそのままの出来。内容的にも428の長く複雑な物語のラストを飾るに相応しい。強固な奈須節は、未だ衰えずといったところ。
 それよか凄いのがイラスト。イラストの数が半端ない。これまでの長編作品と違って、イラスト枚数の物理的な制限がない*2
 だから、かなり贅沢にイラストを詰め込んでいる。Fateでは少ない枚数でどれだけの効果を出すかといった部分があったが、短編である今作はそれを考えなくてもいい分だけ、イラストが豊富に使われている。こんなに贅沢なTYPE-MOON作品なんてあとにも先にもこれくらいじゃないだろうか。
 とりあえず私にはFateよりも楽しみやすい作品でした。脚本はともかく、イラストや演出的な部分ではFateよりも段違いにレベルが上がっています。これだけいいものをつくれたのが、短編だからなのか、TYPE-MOONの自力が上がったからなのかはわかりません(できれば後者であってほしい)。
 TYPE-MOONが好きすぎるかたには「428」であることが邪魔になるかもしれませんが、できることならばTYPE-MOONのイラストを楽しんでほしい。TYPE-MOON奈須きのこだけじゃないんだぜ、ってところをまざまざと思い知らされました。

*1:http://chun.sega.jp/428/message/

*2:データ容量よりも、シナリオの長さからくるプレイ時間あたりにさける枚数のこと。